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ネット&読書探索の遍歴
by kaursh
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カテゴリ:日本文学( 1 )
       
高橋源一郎の『あ・だ・る・と』
a0024788_2610.jpg 前衛文学をきどっていた高橋源一郎が大きく転換したことを示す作品。たぶん、日テレのスポーツ番組「うるぐす」に出演して、江川卓と競馬予想なんかをしてたころなのだろう。これはAVつまりアダルトビデオ製作者の独白といったストーリー。実際に、高橋自身がAVの現場に顔を出すことで、いろいろと学習もしたらしい。過激なAVを気取っているが、読んだ感想としては今ひとつ官能的にはなっていない。作者がAV初心者といった印象を与えてしまうほどだ。電波系のあやしい男優や女優が登場するが、撮影の現場はまったりとした感じで、イヤラシイ感じも弱い。作品としても薄っぺらいイメージをぬぐうことができない。
 本当なら、もっと過激な性的描写を描き出したり、暴力的な部分を押し出してみてもいいようだが、高橋源一郎はもっと淡白な性格なのだろう。根本敬が亀一郎を使ってAVを撮ったようなヤバイ世界からも一線を画している。だが、AVのテーマがこのあとの作品で明治大正の文学史と結び付けられることで、『日本文学盛衰史』と『官能小説家』という不思議と奥行きのある新しい世界を描く一歩へと向かうことになったのだ。明治大正の文学者がAVの世界と結び付けてしまうというある種不謹慎なことも、高橋なら赦されてしまうのだろう。
 そういう意味で、極めて重要な小説でありながら、今ひとつという印象も残る。

 傑作は『日本文学盛衰史』。いよいよ文庫化されたから、買うことにしようか……。でも、単行本も箱入りで魅力的なんだよなあ。漱石と啄木の間のきわどい関係がなんとも唸らせてくれる。
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        by kaursh | 2004-06-15 03:04 | 日本文学