おそらく、というより、当然、ダイエーの経営危機よりも違法性が高いのが、西武鉄道の有価証券報告書の虚偽記載の問題である。
日経の報道にあるように、大株主コクドの株式保有率が約68%といいながら、実際は約88%を保有。ということは9割。
読売の報道では、西武鉄道は1200人分の株式の配当として毎年約4億9600万―4億7000万円をコクドの口座にまとめて振り込んでいたらしい。これでは西武鉄道の株式が東証上場できるような種類のものでないことは明らかである。つまり、東証に上場しながら、少しの株式しか流通していないという極めて歪められた形態の株式なのである。
しかも、こんな状態で30年以上もやってきたというのだから、悪質もいいところ。特定の株主が80%以上保有した状態が1年以上続いた場合には、上場廃止となる。そんなことを鉄道はずっと続けていたのだから、丸石レベルの問題ではない。東証が西武鉄道株を監理ポストに割り当てたことで、上場廃止の危機のために連日のストップ安。管理ポストということで、一般投資家が売り逃げすることができるように一定の猶予期間を与えている。9月中旬には1200円ほどだった株価が急落して、先日の金曜日には781円と半減に近いひどい状況になっている。市場の反応は事件が事件だけに率直な反応としか思えないところだが、新聞報道もTV報道もこうした常識はずれの事態を詳細に伝えようとはせず、腫れ物にでも触るかのような対応である(その割りに、西武の優勝セールはしっかり放送していた)。市場の原理が働くことの良さを実感せざるを得ない。それにこの企業は借り入れの利払いで黒字を赤字状態にして、税金をこれまでほとんど払ったことがない、という話もある。西武の問題については
草野洋の「噂の仕置人 シリーズ『西武』」が詳しい(
これは確かに大手の新聞もTVも話題にできない話が満載。西武の一大帝国は堤清二と堤義明の父親の堤康次郎によって確立されたもので、正力松太郎と共になかなか興味に尽きない。)
今回の上場廃止の騒ぎに至る経緯については不明であるが、総会屋利益供与事件がしばらく前にあったので、そのときに見つかった資料から今度の騒動へとつながっていった可能性がある。だが、それ以外にも、株式新聞社提供の
ヤフーの経済ニュースによると、旧住友銀行はコクドへの融資額が2兆円を超えているとの報道があり、また、9月ごろから西武鉄道の株価は徐々に下降線をたどっていた。西武鉄道に対する危機感はすでに市場に存在していたのである。だが、
ウダウダジャーナルや
Stock Eyes -株式な視点-や
学生のインベスト黙示録が指摘しているように、今回の問題がグループの中ではある程度知られていたとしたら、そして、問題発覚前の株価の下落が関連の人々であったとしたら、それはもちろんインサイダー疑惑へとつながる。一般投資家がそれで損をしたとしたら、まったくいい迷惑。
ちなみに、こんなことになったが、監査法人はどこなのだろうか?と大手の監査法人かと思っていたら、
Strategy-Valuation's blogによると、公認会計士山田秀和事務所と公認会計士近澤優司事務所が監査をやっていたらしい(その後、二人とも25年以上も監査を引き受けてきたことが判明)。大手の監査法人だと、UFJやダイエーなど厳しい査定が金融庁から求められていたが、そのような手段は通用しなかった模様。急に倒産したり、こういう裏技が突如判明したりしては、公認会計士の存在意義も考えさせられる。
そんなときに、堤義明は西武鉄道の次期社長が冷静な人間であることを指摘して、彼ならば球団を手放す可能性もあるかもしれない、と言っているらしい。というより、自分はスポーツ振興の立役者ということだから、泥は別の人間に被らせるということではないか、と思えてしまう。三菱自動車のリコール隠し問題と共に、古い体質の企業がそのままで甘い汁を吸う時代はじょじょに終わりを告げなければならない。
2chのスレ
「【企業】西武鉄道、コクドを「親会社」に訂正 西武鉄道株は監理ポストへ」も参考にした。