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2004年 06月 08日 ( 1 )
       
デヴィッド・リンジー『殺しのVTR』
 スナッフ・フィルムを題材とした警察小説。リンジーは残虐な内容を使いながらも、登場人物の心理描写が優れているため、小説としても面白い作品を書いている。本作はこれまでリンジーの作品を読んだ中でもかなりキツイ問題を扱っている。この種のテーマを扱ったものとしてはヤーロン・スヴォレイ+トマス・ヒューズの『スナッフ・フィルム追跡』というルポルタージュがあるが、リンジーの作品の衝撃度は高い。

(ネタバレ注意)
ヒューストン市警刑事のスチュワート・ヘイドンは殺人事件を追っていくうちに、スナッフ・フィルム製作の集団の存在を発見する。彼らは世界各国の戦地での住民殺害の映像を撮影したり、国内の不良少女を惨殺するビデオを撮ったりしていた。その背後を探っていくうちに、ヘイドンはスナッフ・フィルムに取り付かれた富豪ローグと出会うことになる。彼は動物に内在する殺人衝動が人類にまで巣食っていると考え、自分の欲望を正当化していた。彼は中南米の軍隊に殺人のシーンを撮影させるために資金を提供したり、戦争カメラマンを戦地に派遣していた。ヘイドンは彼を追い詰めようとするが、ローグは自分の撒いた種によって窮地に陥りつつあった。
 ここまで深く書き込まれた作品とは知らないで読み始めたので、途中はかなりびびってしまったほど。だが、リンジーはこうしたグロテスクなものを主題として取り上げているが、その心理分析的な手法で上品さを保つことに成功している。スナッフ関係に対する嫌悪感を育てていくという意味で、倫理的なアプローチに徹している。
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        by kaursh | 2004-06-08 02:43 | 海外小説